近年、生涯未婚率の上昇や高齢化の進行に伴い、一人暮らしの単身世帯が急増しています。それに伴い、賃貸物件を所有・管理するオーナー様や不動産管理会社様の間でも、「身寄りのない入居者が室内で亡くなり、残された遺品の扱いに困っている」というご相談が増加傾向にあります。
厚生労働省の調査などでも未婚率や単身高齢者世帯の増加が報告されており、今後も孤立死(孤独死)や身寄りのない方の退去手続きを巡る問題は避けて通れない課題となるでしょう。
本記事では、身寄りのない入居者が亡くなった際に「誰が遺品整理を行うべきなのか」「どのような法的手続きや初動対応が必要なのか」について分かりやすく解説します。
賃貸物件で一人暮らしの入居者が亡くなった際の初動対応
万が一、所有・管理する賃貸物件で入居者の死亡が確認された場合、オーナー様や管理会社様は冷静に以下の順序で対応を進める必要があります。
1. 速やかに警察へ通報する
室内で入居者が亡くなっているのを発見した際は、室内の物品には一切触れず、直ちに警察へ通報してください。
事件性の有無の確認や、検視・死因の特定を行う必要があるためです。遺体が警察によって搬送された後、身元確認や親族への連絡作業が警察主導で進められます。
2. 親族・法定相続人・連帯保証人を確認する
物件の解約や室内の原状回復を進めるため、契約書をもとに親族や連帯保証人へ連絡を取ります。
- 親族・相続人がいる場合原則として死亡手続きや遺品整理は相続人が行います。ただし、相続人が「相続放棄」を検討している場合、勝手に遺品を片付けたり処分したりすると「単純承認(遺産をすべて引き継ぐこと)」とみなされるリスクがあるため、相続の判断が確定するまで作業を進められないことがあります。
- 連帯保証人がいる場合連帯保証人は借主と同等の債務・責任を負っているため、未払い家賃の清算や、室内の残置物撤去・原状回復費用の負担義務が生じます。
しかし、戸籍の調査が難航して相続人が見つからなかったり、連帯保証人がすでに他界していたりするケースも多く、交渉が長期化してトラブルに発展するケースも少なくありません。
3. 身寄り(相続人)が完全に不在の場合の対応
親族が一人もいない場合や、親族がいても長年疎遠で遺体の引き取りや協力を拒否された場合、また連帯保証人もいない場合は、故人の住所地を管轄する自治体(市役所・区役所等)へ連絡します。自治体によって遺体の引き取りおよび火葬・埋葬手続きが進められます。
身寄りがない故人の「遺品・遺産」の行方はどうなる?
身寄りのない方が亡くなった場合、行政は火葬や埋葬の対応を行いますが、室内に残された遺品整理や家財の処分までは代行してくれません。
法的には、引き取り手のない残余財産は最終的に国庫へ帰属(民法959条)することになりますが、それまでの管理手続きには一定のルールがあります。
相続財産清算人(旧:相続財産管理人)の選任とは?
相続人が不在、または全員が相続放棄をして財産の引き継ぎ手がいない場合、利害関係人(賃貸オーナーや債権者など)が家庭裁判所に申し立てを行うことで、「相続財産清算人」を選任してもらうことができます。
選任された相続財産清算人(弁護士や司法書士など)が、故人の遺産を調査・管理し、未払い家賃の清算や室内の残置物処分を法的に進めることになります。
相続財産清算人の選任を申し立てるための要件
- 利害関係人であること:未払い家賃や物件明け渡しを求める賃貸オーナーなど、正当な権利を持つ者である必要があります。
- 一定の相続財産が存在すること:手続きや清算人の報酬を賄えるだけの遺産が必要です。遺産がほとんどない場合、申立人自身が裁判所への予納金(数十万円〜百万円程度)を負担しなければならず、現実的でない場合があります。
- 相続人が完全に不在であること:戸籍上、相続権を持つ人物が誰もいない状態であることが条件です。
故人にほとんど財産が残されていない場合は、相続財産清算人の申し立てを行わず、やむを得ずオーナー様側の負担で室内の片付けを行わざるを得ないケースが多いのが実情です。
故人が生活保護受給者だった場合の遺品整理
生活保護を受けていた入居者が亡くなった場合、「行政が片付けまで費用を出してくれるのではないか」と思われるかもしれませんが、行政が部屋の片付けや遺品整理を行うことはありません。
- 火葬・埋葬について遺留金で火葬費用が賄えない場合、生活保護法の「葬祭扶助」が適用され、最低限の火葬・埋葬が行われます。
- 残置物の撤去・遺品整理について行政は室内の家財道具の処分には関与しません。連帯保証人がいれば保証人に請求しますが、保証人も不在の場合は、賃貸オーナー様が自費で業者を手配し、次の入居者を迎えるために部屋を原状回復させるケースが一般的です。
遺品整理にかかる費用の相場目安
| 間取り | 料金相場(目安) | 作業人数 | 作業時間 |
| 1R・1K | 15,000円〜 | 1〜2名 | 1〜3時間 |
| 1DK〜1LDK | 45,000円〜 | 2〜3名 | 2〜4時間 |
| 2DK〜2LDK | 90,000円〜 | 3〜5名 | 3〜8時間 |
| 3DK〜4LDK | 130,000円〜 | 5〜8名 | 6〜12時間 |
※荷物の量、階数、エレベーターの有無、汚れの度合いによって費用は変動します。
単身者の孤独死が発生した場合の特殊清掃と費用負担
単身者が室内で亡くなった場合、発見までに日数がかかってしまうケースが少なくありません。遺体の腐敗が進むと、体液の浸透や強い死臭・害虫が発生するため、通常の清掃ではなく「特殊清掃」が不可欠となります。
1. 早急な特殊清掃が必要な理由
遺体から発生した腐敗臭は建物の壁や床材、換気ダクトを通じて近隣住民の部屋まで漏れ出し、大きな苦情の原因となります。
また、体液がフローリングの隙間から床下まで染み込んでしまうと、後々のリフォーム費用が跳ね上がってしまいます。警察から入室許可(現場検証の完了)が下り次第、速やかに消臭・除菌・特殊清掃を行える専門業者を手配することが重要です。
2. 特殊清掃費用の負担とリスク対策
本来、特殊清掃やリフォームの費用は連帯保証人や相続人が負担すべきものですが、身寄りがなく相続財産清算人も立てられない場合、オーナー様が一時的に費用を立て替える(または全額自己負担する)形になります。
こうした想定外の金銭的リスクを回避するためには、近年増えている「賃貸オーナー向け総合保険(孤独死特約・家賃保証保険)」にあらかじめ加入しておくことが有効な自衛策となります。
福岡片付け隊における身寄りのない方の遺品整理・特殊清掃事例
「福岡片付け隊」では、ご遺族様からのご依頼はもちろん、賃貸オーナー様や不動産管理会社様からの直接のご相談にも多数対応しております。
事例①:身寄りのない入居者様がユニットバスで孤独死されたケース
- ご依頼主:賃貸物件オーナー様
- 状況:40代の男性入居者様が室内で亡くなられ、異臭により発見。親族とは長年音信不通で相続放棄され、連帯保証人様も既に他界されていたため、オーナー様からのご依頼となりました。
- 対応内容:迅速な消臭・除菌消毒を含む特殊清掃を実施し、室内の家財道具の分別・搬出を行いました。近隣への配慮を徹底し、無事にお部屋の引き渡しを完了いたしました。
事例②:唯一の親族が他界され、親族代理からのご相談
- ご依頼主:故人の姪御様
- 状況:生活保護を受給されていた男性が室内で他界。唯一の親族であったお母様も直前に亡くなられており、手続きの窓口となっていた姪御様よりご相談をいただきました。
- 対応内容:生活保護関連の書類や貴重品を探索しながら丁寧な仕分けを実施。不要となった家財をすべて撤去し、退去可能な状態までスムーズに清掃・片付けを完了させました。
賃貸物件での身寄りのない方の遺品整理に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 身寄りがない入居者の荷物なら、オーナーの判断で勝手に処分しても大丈夫ですか?
A. 法律上、オーナー様が独断で処分することはできません(自力救済の禁止)。 たとえ身寄りのない方であっても、室内の残置物は法的に「相続財産」として扱われます。勝手に処分すると、後から現れた相続人や利害関係者から損害賠償を請求されるリスクがあります。相続人が完全に不在の場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てるか、法的な手続き・相談を経てから撤去を進める必要があります。
Q2. 相続人が全員「相続放棄」した場合、片付け費用は誰が負担しますか?
A. 原則として、一旦は賃貸オーナー様が負担(立て替え)せざるを得ないケースがほとんどです。 相続放棄が成立すると、相続人には片付けや支払いの義務がなくなります。故人に十分な遺産があれば「相続財産清算人」を通じて遺産から清算できますが、遺産がない場合はオーナー様が自己負担で業者を手配し、次の入居者を迎えるために原状回復を行うのが実情です。
Q3. 連帯保証人や緊急連絡先と連絡が取れない(すでに亡くなっている)場合はどうすればいいですか?
A. まずは警察や自治体(市役所・区役所)へ相談し、身元や親族関係の確認を進めます。 警察による戸籍調査等でも親族が見つからず、連帯保証人とも連絡がつかない場合は「相続人不在」として扱われます。法的なトラブルを避けるため、弁護士や司法書士などの専門家、または専門の片付け業者に相談しながら手続きを進めることをおすすめします。
Q4. 故人が生活保護を受給していた場合、役所が片付けや処分費用を出してくれますか?
A. いいえ、行政が部屋の片付けや家財の処分費用を負担・代行することはありません。 生活保護の「葬祭扶助」によって火葬・埋葬などの最低限の対応は行われますが、賃貸室内の残置物撤去や原状回復は対象外です。連帯保証人がいなければ、最終的にオーナー様側で対応する必要があります。
Q5. 孤独死により室内に強い死臭や汚れがある場合、まず何から手をつければいいですか?
A. 警察の現場検証・入室許可が下り次第、すぐに「特殊清掃」を手配してください。 腐敗臭や体液の汚れは時間の経過とともに建物の基礎や近隣の部屋へ広がってしまうため、一刻も早い対応が求められます。通常のハウスクリーニングでは対応できないため、オゾン脱臭や除菌消毒ができる専門の特殊清掃・遺品整理業者へご相談ください。
Q6. オーナー側が事前にできる「孤独死・残置物トラブル」の予防策はありますか?
A. 「孤独死保険(家賃補償特約)」の加入や、契約時の「残置物処理に関する委任契約」の締結が有効です。 近年は、万が一の孤独死に備えて清掃・原状回復費用を補償する保険が増えています。また、単身高齢者の入居時には、国土交通省のモデル契約条項を参考にした「残置物処理の委任契約」を事前に結んでおくことで、死後のスムーズな明け渡しが可能になります。
まとめ:増加する身寄りのない方の遺品整理への備え
単身世帯や生涯未婚率が増加する中、賃貸オーナー様や管理会社様が身寄りのない入居者の孤独死・遺品整理に直面するリスクは年々高まっています。
万が一の事態が発生した際は、まず警察へ通報し、関係各所(連帯保証人・自治体・専門家)と連携を取りながら慎重に進めましょう。また、早期の現場復旧のためには、特殊清掃や残置物撤去をワンストップで迅速に行える専門業者を把握しておくことが大切です。
「福岡片付け隊」では、遺品整理士による丁寧な仕分け作業から、緊急を要する特殊清掃、お部屋の消臭・原状回復までトータルでサポートしております。お困りの際はお気軽にご相談ください。
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